デザイナー達は、ミラ、セトゥー、ミラ2チェアなどの既に発表した製品を考案中に既に、理想的なチェアは、自然なバランスを保つスムーズな感覚を提供するべきだと認識していました。「できるだけ容易に姿勢を変えることができるチェアに座るべきです」とローランドは言います。「それは、正しく調整してくれるチェアでのみ実現可能です。なので、私達は、それを実現するチェアを作りたいと思っていました」
チェアにとってのチルトは、車にとってのトランスミッションのようなものです。そしてトランスミッションのように、手動のものもあれば、Cosmのように自動のものもあります。自動調整モデルのほかのチェアは、チルトの動きに身体を合わせることで、座り方を決定します。Cosmの自動ハーモニックチルトは、どのような姿勢かに関係なく、まず座っている人を優先して対応し、バランスの取れたリクライニングと個人に合った快適性を提供します。Studio 7.5とハーマンミラーは、複雑に微調整されたメカニズムを発明して、自動調整チルトを完成させました。座っている人の絶えず変化する垂直方向の力を判断して、チルトのギアは、リーフスプリングに沿って支点を移動し、チェアの張力を自動調整します。
チルトのみが、Cosmを最も精製したデザインにしているのではありません。手製と3Dプリントで作られた部品の何百もの試作品を作成するという細かいプロセスが、今までにないシーティング体験への道を開いたのです。「最大の難題の一つは、または最大のチャンスの一つと言えるのは、サスペンションを、フレームに出来るだけシームレスに調和させて取り付ける方法を考えることでした」とバークハードは言います。その答えは、小型の「歯」の形状でした。これにより、体圧を均等に分散するために張力を保ちながら、サスペンションをチェアのフレームに留めることができました。Studio 7.5がサスペンションをフレームに取り付けたこの巧妙な方法は、彼らが呼ぶところの「インダストリアル・クラフトマンシップ」の最高の例と言えるでしょう。そしてそれがデザインプロセスを導く光となったのです。「機械工やエンジニアでなくても、座った時にどのようにサポートされるのかを理解できる、分かりやすいデザインが私達は好きなのです」とカローラは言います。
Cosmチェアの人間工学に基づいたデザインは、今までに類を見ないリーフアームによりさらに強化されています。このデザインは、最初に不格好なフォーム材で木材を包み込んだことから始まりました。そして時が経つにつれて、形状、サイズ、そしてニックネームが変化していきました。オートバイのシート、腕に合わせた半分の筒、ダンボの耳という風にです。「肘は骨格において繊細な部分です。柔らかく安定した場所に置かれるべきです」とバークハードが説明します。「Cosmのリーフアームは、すぐれた快適性と共にシンプルかつスリムな魅力的な外観を提供しており、このチェアの意図する全体の機能性と美にぴったりとマッチしています」現代の働き方を認識して、Studio 7.5は、様々な用途に対して快適さを提供するアームをデザインしました。リーフアームでは、電話や本を快適に自然に持つことができ、またデバイスを使用している時にデスクにぶつからないようにアームに角度がついています。
Cosmの開発時間の多くは、技術的、工学的難題に取り組むことに費やされましたが、Studio 7.5は、その美しい外観にも決して妥協しませんでした。スムーズなサスペンションに彫刻のような形状を持つCosmチェアは、パーツの集まりではなく、一つのオブジェのように見えます。この統一感は、その落ち着いた素材にも現れています。「モノクロのカラーは、物を非物質化にします」とバークハードが「カラーに浸したような」コンセプトについて説明します。チェアはトップからボトムまで一つの色調で統一されています。「チェアは、多くの異なるメタルやプラスチックで作られていますが、最終的には、一つの物になるのです」
ドイツ語でデザインは「entwerfen」ですが、大雑把には「投げる」という意味になります。カローラによれば「時代の少し先に何かを投げ込む、または自分の知っている物の先に投げ入れることで、正しい方向へと導かれる」そうです。「投げる」ことで、Studio 7.5とハーマンミラーは、Cosmという最も洗練されたデザインへと導かれました。