デザインの背景
深澤直人がデザインしたこのチェアには、「喜びを呼び起こし、新しい形を作り、最終的には次の布張りのアイコンとなる」という明確な目標があります。人、環境、そして椅子の関係性を考えた深澤は、身の回りの世界にこそに「インスピレーション」があると考え、まずはその名前に目を向けました。「アサリ」の丸みを帯びたエッジと彫刻的なパーツは、このチェアに擬人的な個性を吹き込んでいます。デザインのビジョンを示すために深澤とチームが手作業で作り上げた彫刻的なプロトタイプは、川石の滑らかで心を落ち着かせるような石の表面と、シンメトリーなマカロンに感化されています。
デザイナーが描く彫刻的なビジョンとフォルムを実現するには、当社の開発チームが、チェアを組み立てる方法を新しく生み出す必要がありました。そこで開発チームは、すっきりとした縫製と外観を確保しながら、ハーマンミラーの厳しい基準を確実に満たしつつ、チェアのフォルムを実現するための新しい製法を考案しました。
その結果、フォルム、縫製、曲線一つひとつにこだわって丁寧に作り上げられたデザインが生まれ、このチェアはまさに、家具のアイコン的な存在となりました。
初のパートナーシップ
深澤が求める高さのあるフォルムと、信じられないような柔らかさをアサリで実現するために、ハーマンミラーはマハラム社と提携して、チェアの個性に合った3つの素材Meld、Luce、Stow Leatherを厳選しました。ハーマンミラーのオフィスチェアで、このように焦点を絞って提携するのはこれが初めてです。
Meldは、蛍光糸を目の詰んだバスケット織りにした明暗差のある表面の揺らぎが特徴的な、普遍的な魅力を備えた多用途のテキスタイルです。ウールのような見た目と感触のMeldは、主に消費後のリサイクルポリエステルでできています。
イタリアで織られたLuceの豊かなパレットの元になっているのは、ヨーロッパ各地で調達した衣料品の消費後リサイクルウールです。オフセットあや織りによる表面のシボが、さまざまな色が混ざったLuceの毛糸の深みを際立たせています。
マハラムデザインスタジオの素材専門家の指導のもと、北イタリアのなめし革工房専門店で調達されたStowは、より自然な状態の本来の革の美しさを備えています。Stowはコンパクトな形状で手触りが柔らかなので布張りが行いやすく、保護トップコートにより汚れにも強くなっています。