Bill Stumpf、Don Chadwickによって作られたAeron

プロダクトデザイナーの仕事は、科学者、エンジニア、アーキビストのようなものです。彼らの作品は、長年の研究と手直しの結果として、あるものから全く別のものへと変化していきます。デザイナーのBill StumpfやDon Chadwickほど、このことをよく知っている人はいないでしょう。彼らは、人々の座り方について長年にわたる研究を重ねてきました。彼らの最もよく知られた共同製作としては、1994年に発売された人間工学の革命とも言えるAeronチェアを挙げることができ、今日のオフィスシートのゴールドスタンダードとなっています。しかし、Aeronはまったくの思いつきで発明されたわけではありません。ChadwickとStumpfは、彼らの考える要素を取り入れたチェアの先行モデルを数多く手がけました。試作品から業界のパイオニアになるまでのAeronの歩みをご紹介します。

1976年

世界初の研究に基づく人間工学を取り入れたチェアを発表

Aeronチェアが発売される約20年前に、Bill StumpfはErgonをデザインし、オフィス用シーティングの世界を大きく変えました。Ergonの発売前、Stumpfは快適性の基準を挙げていました。これは、Herman Millerのハイパフォーマンスシーティングの定義に影響を与え、快適性、機能、美学のバランスのとれた視点をもたらしました。

1984年

「ベスト・オブ・ザ・ディケード」受賞

Bill Stumpfは、Don Chadwickと初のチェア＆ソファコラボレーションであるEquaチェアを発表しました。このEquaチェアは「じっと座っていられない人のためのチェア」として販売され、『Time』誌の「ベスト・オブ・ザ・ディケード（過去10年間で最も優れたもの）」のデザイン賞に輝きました。

1987年

長時間でも快適な座り心地

StumpfとChadwickは、試験的なプログラムの一環として、高齢者向けの座り心地の良いチェアを共同で研究しました。その結果、編み込まれた伸縮素材と新型の内部サスペンションを採用し、高度な運動学の実験を経て、Sarahチェアが誕生しました。

1994年

人間工学の革命

StumpfとChadwickが設計したAeronチェアは1994年に発売され、その後急速にオフィス家具業界に革命をもたらしました。Pellicleと呼ばれる独自の通気性のあるテキスタイルのおかげで、人間工学と素材革新の両方で先駆的な存在であることが証明されました。この素材は様々な方向に曲げることができ、当時のオフィスチェアによく見られる標準的なフォームや布、革などの生地を使わずに、そのままの状態で視覚的にもエレガントでした。

博物館の展示作品へ

Aeronはすぐにワークチェアの新たなゴールドスタンダードになり、ニューヨーク近代美術館（MoMA）に常設展示されることになりました。

1996年

日本のグッドデザイン賞

Aeronは、日本の通商産業省（MITI）（現・経済産業省）が主催する「グッドデザイン賞」のオフィスとストレージの部門で金賞を受賞しました。

1999年

中国の「デザイン・オブ・ザ・ディケード」

Aeronは、中国で「デザイン・オブ・ザ・ディケード（過去10年間で最も優れたデザイン）」の金賞を受賞しました。

2000年

「ベスト・オブ・ザ・ディケード」再受賞

米国産業デザイン協会と『Business Week』誌は、Aeronを「デザイン・オブ・ザ・ディケード（過去10年間で最も優れたデザイン）」であると賞賛しました。

2002年

PostureFitの仙骨サポート

Herman Millerは、背部治療の専門家で、デザイナーでもあり、生体力学や人間工学などの分野で複数の特許を持つBrock Walker医師と共同で、特許取得済みのPostureFitテクノロジーを発表しました。

考え抜かれた統合スタイルとテクノロジー

『Fast Company』誌は、その「考え抜かれた統合スタイルとテクノロジー」、手ごろな価格、アクセスのしやすさ、そしてインパクトを称えて、過去100年における消費者製品の優秀デザインベスト15にHerman MillerのAeronチェアを選出しました。

2005年

シンプソンズに登場！

Aeronチェアは、『ザ・シンプソンズ』のエピソード「Thank God, It's Doomsday（終末の日とはありがたい）」に登場しました。そこには、人間工学に基づく玉座に座る神の姿が描かれていました。

2009年

Cradle to Cradle

Aeronチェアはその環境面と社会的な実績が評価され、業界をリードするCradle to Cradle V3 Silverレベルの認定を受けたHerman Miller初の製品となりました。

2011年

優れたデザイン、長い寿命

Aeronチェアが、日本の通商産業省（MITI）（現経済産業省）の「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しました。

2016年

現代のニーズに合わせて一新

Herman Millerは、共同デザイナーのDon Chadwickの協力を得て、座るという科学に関する新たな研究に加え、素材、製造、技術の進歩を取り入れたAeronの最新版（鋳造によりリマスターされたもの）を発表しました。リマスターされたAeronは、より洗練されたチルトメカニズム、調整可能なPostureFit SL、そして8Zと呼ばれるPellicleのアップデートなどを装備してデビューしました。8Zは、座面に4つ、背面に4つ、計8つの「テンション」ゾーンを備え、サスペンションがさらに強化されています。